Model Inside Story 春咲ひなた

 

 

 歌、ピアノ、ヴァイオリン、クラシックバレエ、英才教育に熱心だった母親は、お嬢様がするような習い事をアタシに求めてきた。今、思えば小学生の頃はもしかしたら今よりもハードな生活を送っていたのかもしれない。ただただ習い事をこなす毎日。楽しいとも辛いとも感じていなかった。けど、少しでも母親に反抗しようものなら、アタシの身体には拳が飛んできた。不満は少しずつ増えて、そこに母親と父親の不仲も相まって徐々にストレスはたまっていた。

 そんな生活を送っていた中学1年の時、アタシの怒りは頂点に達した。母親の拳を抑え、代わりに母親にアタシの拳をお見舞いしてやった。それ以来、アタシは母親の顔を未だに見ていない。それがきっかけではなかったのだろうけど、夫婦仲も限界を迎え、とうとう離婚することが決まった。中学生だったアタシが「もう別れたほうがいいよ」という言葉を言ってしまうくらい、誰がどうみても夫婦関係は冷え切っていた。

 アタシは母親の英才教育から解放されたことで、羽根を伸ばすように荒れた学生活を送ることになる。よくテレビとかでやっている、親の厳しい教育に抑圧された娘が、その反動でグレてしまうアレだ。本当にわかりやすいくらいに荒れて、中学3年間の出席日数は、たったの36日。そもそも髪の色が金だったりピンクだったりして、学校行っても教室に入れてもらえなかったし。ほとんど毎日、学校サボッて渋谷に遊びに行ってた。そこで出会った仲間たちはみんないいヤツだったけど、正直、逮捕されてもおかしくないような遊びばっかりしてた。

「このままじゃ本当にダメだ」と思ったのが高校に入る時。と言ってもまともに学校に行けるワケもないから、定時制の高校に通うことにした。親が離婚して裕福な暮らしはもうできなくなっていたから、自分の学費を稼ぐのにバイトをしながら通った。それで18歳になった時、キャバクラに出会った。もともと実家は飲食店をやっていたからキャバクラで働くことに全く抵抗もなかったし、昼の仕事をしてからクタクタで学校で勉強するよりも、遥かに経済的で効率がよかったんだよね。

 そんなこんなで定時制の高校を卒業し、気が付けばキャバクラで4年も働いていた。でも正直、飲みキャラで売っていた自分がいたので、早くも身体にはガタがきちゃってて、お医者さんに「子宮がかなり弱っている。このままだと子供が産めなくなるかもしれない」と言われて、これはまずいと思ってキャバクラは一時休業。いろいろほかの仕事をやってみようかと思っていたけど、好きでもない仕事なんてやっても絶対に続かないだろうなって自分が一番よくわかってた。休業している間に付き合っていた彼氏もいたけど、その人とも別れて、何かこう吹っ切れたんだろうね、またキャバクラやろうって思った。もともとやめたくてやめたわけじゃないし、次やるなら納得いくまでやってみたいと思っていたから。

 それでいくつかのキャバクラ店で働いた後に今いる「azian club」に辿りついた。やっぱり老舗の高級店っていうこともあって、今まで働いていたお店とは、客層もキャストの質も格段にレベルが高かった。自分がこの先、やっていけるか不安だったけど、ただそこでマリエさんっていう先輩に出会って衝撃を受けた。よくしゃべって、よく飲んで、よく笑う、それにつられてお客さんも楽しんでくれるということを体現している人。キャバクラの基本だけど、実はこれができる人はなかなかいない。そんなマリエさんの姿を見て、「この人みたいにできたら、仕事がすごく楽しいだろうな」って思えた。

 今までポンコツのアタシは不器用ながらに可愛い系、カッコイイ系、飲みキャラ、いろんな自分を演じてあの手この手でお客さんの興味を引いてがんばってきた。時には色恋を利用してお客さんにイヤな思いをさせたこともあると思う。キャバ嬢にはそれぞれその人のスタイルがあって、その道を突き詰めた人が成功しているとアタシは思っている。だから今までの演じていた自分は、本物ではないってことに気づいた。だからアタシは自分の中で4つのルールだけを守って仕事をしようって決めた。「しゃべる」「飲む」「いいヤツ」、そして「ちょっとのエロ」が今のアタシのスタイル。特に「いいヤツ」は重要で、人として当たり前のことを守ろうってこと。嘘をつかない、人をだまさない、約束は守る、これってキャバクラ嬢としてお金を稼ぐことになるとグラグラきちゃう時が多いんだよね。でもこの誓いを立ててから、アタシのまわりにはいい人しかいなくなったと思う。

 今までバカでどうしようもない人生歩んできたアタシだけど、だからこそ失敗していろいろ学べたんだと思う。人に自慢できる人生ではないけど、ただ後悔だけは一度もしたことはない。これからも上を目指し続けたいと思っている。

 

*** 本紙未収録STORY ***

 

 まだ社会の右も左もわからない18歳、初めて歌舞伎町のキャバクラに働きに来た時、お店に来ていたある男を私は好きになった。年はたぶん20代前半くらいに見えたかな。働いているお店にちょこっと来てはオーナーや店長とよく話をしていて、「一体何の仕事をしている人なんだろう?」と思って、同僚の子に聞いたら彼がキャッチの仕事をしていることがわかった。今でこそキャッチの仕事がどんなものかわかるけど、当時の私にしたら「何それ!? すごい!!」と根拠もなく、珍しい仕事をしている人に変な憧れを持っちゃってたんだよね。18歳なんて仕事をしている男の姿ってかっこよく見えちゃう年頃だし。それで何かのきっかけで彼と話したら、やっぱり人と話すのが仕事だから、トークはめっちゃ面白いし、もうその時点で恋しちゃってたんだろうね。で、まぁ、こうなってくると完全に流れとしてはエッチしちゃうわけですよ。

 

 でもね、ヤッちゃった後に気付いたんだけど、もうハンパないんッスよ、その男の女グセの悪さったら!!
それがわかったきっかけが、気心しれた同僚に「あの男とヤッちゃったんだよねぇ」と話したら「ああ、アイツとはやめたほうがいいよ、私ともヤッてるから」って。それで、いろいろ調べたら私の働いてるお店のキャバ嬢と8割方ヤッちゃってるワケ・・・。中には「今も彼と付き合ってますよ」みたいな絶賛浮気中の子もいたし。
私はブチ切れてその男を問い詰めたら、な~んかうまくごまかそうとしたりして煮詰まらない感じ。私も彼を好きだったから、もういいやと思って「じゃあ関係ある女は全員関係を切って私と付き合って」って切り出した。今思うと私ってすごく男らしい!ね!(笑)

 そんなこんなで浮気をせずに真面目に付き合うようになったんだけど、でも彼の行動や言動から見え隠れするわけですよ、まだ完全に切れていないセフレ女の影が。女の勘は鋭いからねぇ、とうとう彼も薄情してセフレがいることがわかった。それで洗いざらい話をさせたら、とんでもないことが判明。セフレ相手のアダ名は「みーちゃん」。そして私が彼に呼ばれているアダ名も「みーちゃん」・・・。
 彼がひとりで写って「みーちゃん好きだよ♪」と書いたプリクラのプレゼント・・・。彼が私の隣で寝ていて「み~ちゃ~ん」と寝言で言っていたあの名前…。過去を思い返せば思い返すほど、あれあれ?

あの「みーちゃん」は一体誰のことだったのかとッ!!
まぁ、私も今はいい大人の女だし、そんな恋の失敗談もいい経験としてプライスレス!!
・・・なんて言うわけないだろー!!
私の青春を返せーッ!!